第7回国際交感神経外科シンポジウム
2007年に開催された第7回国際交感神経外科シンポジウム
7th International Symposium on Sympathrtic Surgery (7th ISSS), Porto de Galinhas, Brazil, 2007
2年ごとに開催される多汗症治療に関する国際学会です.各国から専門医が集まり,現時点での最も進んだ治療法と治療成績が発表されます.2003年はドイツ,2005年はオーストリア,今回はブラジルで開催されました.私も2003年から3回連続して手術成績(佐田病院勤務時代)を発表し,今回はセッション別の座長も務めました.
おもな発表内容(低位交感神経遮断に関する発表は赤字)
O-002:過去10年に交感神経遮断手術をうけた342名の術後アンケート調査結果(スペイン):生活の質が向上した(89.9%),生活の質は変わらない(8.3%),生活の質が低下した(1.8%).88%に代償性発汗が発生した.【結論】交感神経遮断は手掌多汗症に有効で多くの患者で生活の質が向上したが,代償性発汗がおもな副作用あった.
O-006:代償性発汗に対するクリップ法でのリバーサル(クリップ除去)の結果(韓国):クリップ法を行った87名のうち代償性発汗で手術を後悔しクリップを除去したのは15名(17%)でこのうち9名(64%)は代償性発汗が著明に改善した.
O-008:多汗症に対する220例の交感神経遮断手術の結果(米国):手汗の改善(99.3%),わき汗の改善(87%),足裏汗の改善(73%).再発率は手汗再発(7.8%),わき汗再発(24%),足裏汗再発(22.1%)であった.
O-010:交感神経遮断手術をうけた多汗症200名の術後満足度調査結果(ブラジル):代償性発汗軽度(90%),中程度~高度(3%).満足度(10点満点)の平均点9点.生活の質の改善(96%),以前と変わらない(1%),生活の質が低下(3%:すべてがわき汗多汗の患者).【結論】わき汗患者には満足度が低く交感神経遮断の適応ではない.
O-011:Th3遮断206例とTh4遮断356例の5年間の比較(ブラジル):Th3遮断(206例)での再発率は手汗再発(3.39%),わき汗再発(8.25%),代償性発汗の発生率は75.7%であった.Th4遮断(356例)での再発率は手汗再発(10.3%),わき汗再発(17.4%),代償性発汗の発生率は17.4%であった.【結論】Th4遮断では再発率はやや高いものの代償性発汗の発生率は有意に低かった.
O-014:Th4遮断112例での5年間の追跡結果,とくに代償性発汗について(オーストリア):Th4遮断をおこなった112例で手汗100%,わき汗88.3%が発汗停止または減少した.代償性発汗は17%で発生し,部位は背中72.2%,ふともも38.9%,腹部33.3%,足33.3%,胸22.2%であった.16.7%が代償性発汗により手術結果に不満であったが,80%以上では結果に大満足または満足であった.【結論】Th4遮断では手汗に対してはexcellentでわき汗に対してはgoodであったが,不満と答えた患者では背中とふとももの代償性発汗が生活の質と満足度を低下させた.
O-015:交感神経遮断手術後の経過におよぼす影響(英国):手汗または顔汗で交感神経遮断をおこなった114例で,高度な代償性発汗がおこったのはすべて顔汗患者で高位の交感神経を遮断した結果であった.年齢,性別,肥満度は結果には影響しなかった.
O-016:顔面多汗症,赤面症に対するTh2遮断の有効性(米国):4年間におこなった顔汗,赤面症に対するTh2遮断22例のうち11例にアンケート調査が可能であった.90.9%が結果に満足し,81.8%が仮に過去に振り返っても同様の手術を受けると答え,90.9%が同様な症状をもつ友人に手術を勧めると答えた.顔面多汗の有効率は著明に改善54.5%,改善18.2%,変化なし9.1%,少し悪化9.1%,悪化9.1%でした.赤面症の有効率は著明に改善45.5%,改善9.1%,少し改善18.2%,変化なし27.3%でした.対人恐怖症に対する有効性は著明に改善63.6%,改善9.1%,少し改善9.1%,変化なし18.2%でした.
O-018:5年間561例の多汗症に対する交感神経遮断部位Th2,Th3,Th4の比較(ブラジル):Th2遮断163例,Th3遮断66例,Th4遮断332例のうち,代償性発汗の発生率はTh2遮断とTh3遮断で67%,Th4遮断で61.3%であったが,高度の代償性発汗はTh2遮断で32%,Th3遮断で9%,Th4遮断で4%であった.【結論】軽度なものを含めると代償性発汗の発生率には有意差はなかったが,高度な代償性発汗は低位とくにTh4遮断で4%と著明に発生率が減少した.
O-024:複数の交感神経遮断と単独交感神経遮断の比較(ブラジル):手汗患者99例にTh3単独遮断,わき汗患者92例にTh4単独,手とわき汗両方の患者116例にTh3-Th4遮断をおこなった結果,代償性発汗の発生率は単独遮断(Th3またはTh4)よりも複数遮断(Th3-Th4)で有意に上昇した(単独遮断では中程度15%,高度1%,複数遮断では中程度27%,高度4%).
O-026:クリップ法交感神経遮断部位(Th2,Th3,Th4)の違いによるクリップ除去の過去5年間の結果(オーストリア):クリップを除去した23例のうち,3例はホルネル症候群(Th2遮断1例,Th3遮断2例,Th4遮断ではホルネル症候群ゼロ)のため,20例は高度な代償性発汗のためであった.Th2遮断とTh3遮断では9.5%の患者がクリップ除去をおこなったのに対し,Th4遮断では1例(0.7%)のみクリップを除去した.ホルネル症候群3例はクリップ除去により改善した.代償性発汗はクリップ除去で3例(15%)は完全に改善したが4例(20%)で改善が得られなかった.【結論】クリップ除去はホルネル症候群や高度な代償性発汗が発生したTh2やTh3遮断で約10%におこなわれたが,Th4遮断ではわずか1例のみであった.
O-035:手汗,わき汗患者に対するTh4遮断は高度な代償性発汗の発生を抑えた(ブラジル):過去4年間でTh4遮断をおこなった416例で,手汗に対する有効率は98.2%,手とわき汗に対する有効率は96.3%,わき汗に対する有効率は98.6%であった.術後に軽度の代償性発汗は37.5%に発生したが高度な代償性発汗はゼロであった.